37.5℃の壁に苦しんでいませんか?

大分市内で民間の病児保育専門の認可外保育所を運営しているライフデザインラボ株式会社代表取締役 太田 瞳です。
私は、9歳・7歳・5歳の子どもを育てる母親であり、クラシックバレエ教室を運営する責任者です。
そんな私が、民間の病児保育所を運営するに至った経緯とそのサービスに対する切なる願いをちゃんとお伝えしたいと思い、したためました。ご一読いただけますと幸いです。
この全国初のサービスに関心を寄せていただいた方におかれましては、ご連絡いただけますと幸いです。

#1 起業のきっかけ

私は、9歳の頃からクラシックバレエを習い、バレエ教室の教師になることをずっと夢見ていました。結果として、平成28年11月にその夢を叶え、「プリマクラッセバレエスタジオ」という小さなバレエ教室をオープンすることができました。

その夢までの道のりにおいて、一番辛かった挫折は、37.5℃の壁に負けたことです。ご案内のとおり、保育園の多くは、子どもの熱が37.5℃を超えると預かってもらえません。
それは、保育園が悪いのでは無く、子どもの集団感染などを防ぐため、そして健康な我が子を守るため、やむを得ない措置だと思います。

しかしながら、子どもは体の免疫を作るために、乳幼児ほど病気に罹ります。
ある統計では、子どもの病気で親が仕事を休んだ回数は、0 歳児=17.3日、1歳児=14.9日に及ぶというデータがあります。
まさしく私と夫は、我が子の病気により、このデータに近い回数の仕事を休まなければなりませんでした。それも、2歳差で3 人を産んだため、その時期が6年近く続いたことになります。

37.5℃の壁に負けたのは、夫の転勤により身寄りの無い東京で3年間を過ごした時でした。
当時、仕事の忙しかった夫を頼ることもできず、1人で乳幼児3人を育てる中、夜中や朝方、急に熱が出たり、インフルエンザに罹ったり、3人のうち誰かか保育園に行けない日が多かったことが原因で、せっかく始めたバレエ教室のパートすら満足に働くことができませんでした。
“このままだと夢を叶えることはできない”でも、“病気の我が子は、上司や同僚にイヤな顔をされても看病したい”そんな自分の夢と母性の狭間で葛藤に苦しみ、言葉では言い表せない不安と絶望に襲われ、小児科からの帰り道、病気の子どもを抱えたまま、泣きながら商店街を歩いていました。

そんな時、認定NPO法人フローレンスが手がける訪問型病児保育のことを知り、私は不安と絶望から救われました。
そして、私も、私と同じように仕事と育児に苦しむ母親、父親のために役に立ちたいと思うようになりました。

#2 病児保育の現状

東京から帰郷し、大分でもフローレンスと同じ“訪問型病児保育”を始めようと、夫と2人でいろんな方に相談しました。そこで浮き彫りになったのが、東京との違いです。
フローレンスは、病児保育専門のベビーシッターを当日予約でも各ご家庭に派遣します。車を持っていない方が多い東京では、病気の子どもを電車に乗せて病児保育施設へ移動することは現実的ではありません。そこで、ベビーシッターを各ご家庭に派遣するサービスが成立します。
一方、弊社のアンケート結果では、大分では誰もが車を持っているため、自宅ではなく、病児保育施設での保育を望む方が大半でした。その病児保育施設は、現在大分市内に5カ所あり、定員は全部で60人しかありません。
これは、年間約4,500人が生まれる大分市において、病児保育施設を利用する年齢を10歳とした場合の人口45,000人に対し、0.1%程度のカバー率となります。大分県庁や大分市役所、小児科の医師もこの現状を少しでもよくしたいと頑張っています。それは、夫が昨年度まで勤務していた大分県庁で福祉保健部の予算を担当していた時に、夫を通じて関係者の大変な努力を知りました。それと同時に、どうしようもできない現実がココにあることもよくわかりました。

その現実とは、行政が病児保育事業を運営するからには、万全を期して、医師と看護師、保育士などの専門職が病児保育施設に常駐することを条件としています。時期によって利用者の変動が大きい病児保育施設は、不安定な収入で高額な人件費を確保しなければなりません。
加えて、隔離スペースや病原菌の蔓延を防ぐための特殊設備が必要であるなど、施設の運営にも多額の資金が必要です。行政は、その赤字補填のため、1カ所あたり数千万円に及ぶ助成金を捻出しているそうです。(大分市役所は、平成30年度予算で5カ所の運営費と6 カ所目の開設に約1億2千万円を計上しています。)
これでは、今以上に病児保育施設を増やすことを行政に期待することはできません。

#3 サテライト型病児保育サービスの誕生

このような中、夫と2人で考えたのが全国初のサテライト型病児保育サービスです。運営コストを削減するため、家庭的保育事業と呼ばれる現行制度を活用し、一般家庭の空き間を利用して、定員4人以下で保育します。現在は使っていない、かつての子ども部屋を間借りした家庭的保育所を大分市内に何カ所も開設し、その日の利用者数に応じて、施設を稼働させることで、施設の運営コストをカットすると同時に、症状の違う子ども達を隔離します。この方式を衛星に見立てサテライト型と名付けました。そのちりばめられた保育室へは、kidsStation を窓口としてお子様のお預かりとお引き渡しをワンストップで行い、小児科を受診してから、各施設で、当番の看護師・保育士・訓練を受けた経験豊富な母親達が2人一組になってお子様を大切にお預かりします。また、全ての施設の保育状況を1時間に一度、看護師が確認し、お子様の体調や保育の状況を毎時間保護者へメールにてご報告いたします。民間企業が運営することで、過剰な設備整備と人件費を抑制することができるようになりました。

#4 弊社の病児保育サービスと保育スタッフ

弊社の病児保育サービスは、看護師・保育士・研修を受けた子育て経験豊富な母親達が2人一組で対応し、医師の指示を守り、子どもに寄り添って保育と看病にあたります。弊社の保育スタッフは、母親が我が子を育てるよう、そして、医師の指示を忠実に守ることができるよう、絶えず研修で知識と技術を磨いています。私は、保育スタッフが看護師だから、保育士だから、何かの資格を持っているから、病気の子どもを預けても安心だとは思いません。私は、子どもを育てるのに一番大切なのは母性だと思います。当然のことですが、母親になるために資格など必要ありません。お預かりするお子様達には、母親と同じ愛をもって接することを弊社の経営理念としているため、弊社は看護師などの資格を持っていなくても子育て経験豊富な母親をスタッフとして採用しています。しかしながら、お客様の大切なお子様をお預かりするにあたり、資格を持っていないスタッフは、50時間以上の研修を受講しなければ、主任保育スタッフに昇格できない厳しい基準を設けています。民間の病児保育所では、一般的に10時間以上とされる研修時間を大幅に上回るだけではなく、必ず2人一組で対応することによりヒューマンエラーを防止する万全の体制でお預かりしています。

子どもの病気は、成長の過程に必要な当たり前のことです。私たちも健康と病気を繰り返しながら成長してきました。核家族化となった現代において、女性が活躍するためには、子どもの病気を日常のこととして受け入れ、何の不安も躊躇も無く、病児保育を普通に利用できる社会になることが必要です。さらには、子どもが病気の時は、普通に“子どもの看護休暇”を使える社会になることを願っています。弊社の新たな挑戦が、多くの子育て世代にとって必要とされるサービスであることを望むと同時に、将来的には弊社の様な病児保育施設が必要なくなる社会の構築を目指します。